来たる秋
夕方、買い物に行こうと外に出ると
ふわっと金木犀の香りとともに、秋焼けの空が広がっていました。
ああ、秋なのだと感じながら
八百屋に着くと
いちじくが売られていました。
なかなかお目にかかれない、生のいちじく。
よし、これは
と思い、つい購入。
どうしたら調理したらいいですかねー?
と八百屋のおばちゃんに尋ねてみると
柔らかいのは生で食べるのもよし。コンポートにするのもよし。ジャムにするのもよしだよ。
と笑顔で返してくれました。
せっかくなので、ジャムにしちゃおうと
暗くなってきた帰り道
一匹のセミの鳴く声に混じって、鈴虫の音が聞こえてきました。
ああ、秋になってしまったのだなと
先程とは違う、感傷的な気分になってしまいました。
時の流れははやく
あっと言う間に飲み込まれてしまいそうになる。
そして考える。
君は何をやっていたのか。と聞かれたら
何とも答えられなくて、歯痒くて、
心にささくれが出来た感覚がするだろうなと。
でも、きっと人間、胸を張ってこれと言えるまでには時間がかかるのだ。
即席でやってのけたことは即席でしかない。
いつかきちんと胸が張って言えることができるまで、今を積み重ねるしかないのだ。
うん。
自分なりの納得を経て、
来たる秋に喜びを感じつつ、愁いを噛み締めました。
これこそ、秋の心なのかもしれません。